『基地』について byかんとく

年度が変った。

2010年度である。

ワタクシ、たまに2,3日HPを更新していない日が、このところ多かったと思う。

業務が忙しい。まあそれもある。

DJ総長と夜の街を駆け回る。それもある。

が、もう一つ、あるのである。

実は、沖縄に行っていた。

毎年遊びに行っているが、今回はその遊びに行ってきたことから

とある若者を紹介されたのである。

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1月、沖縄に行っていた旨、ここにも書いた。

そのときにとある本の紹介を書いたが、読んでいて米軍基地って入れると知った。

もちろん民間人では基本的にムリ。

日本人が入れるのは、米軍が基地を解放する日がある。

フリーマーケットである。

何の予定も決めてなかったので、喫茶店で知り合ったジモティーとフリマに行く。

米軍使用のナウい感じのアロハシャツを物色していると、

ボクシングのビデオを売っている黒人を発見した。

お、ハメドあるじゃん、とニヤニヤしながら理解できない英語の解説を読んでいると、

その黒人が「ボクシングに興味があるのか」という。

答え方に困ったので、「愛、ラブ、糸。愛、ボックスド」。

「俺もやっている」という(目の前の人間の会話は、リスニングはそこそこ出来る)。

・・・・・

以下その内容。

ワタクシ「そっか、昔大学でやってたんだけどね、今はコーチ」

米兵「なるほど、高校生を教えてるのなら、嘉手納をしってるか?」

ワタクシ「嘉手納?嘉手納基地のことか?」

米兵「ベースじゃないよ。3年前の高校生にいい選手がいたろう。

高校所属じゃなくて、ジムでやってた選手だ」

ワタクシ「悪いけど、俺兵庫で大学生を教えてるんだ。沖縄の選手は知らないんだ」

米兵「あーそうなのか。じゃあちょっと待ってろ、会わせてやるから、10分待ってな」

そういうので、ジモティーには後で電話するからと言い、

先ほどのハメドのビデオを、傍のビデオデッキに挿し込んだ。

・・・・・

ビデオを見ていると、声がした。

米兵「つれてきてやったぞ、嘉手納だ。」

ワタクシ「ちょっと待ちなはれ、このラウンド終わるまで。」

嘉手納「あ、どうも、こんにちわ。なんかスタンが要領を得ないんだけど、

ボクシング部のマネジャーが来てるから会ってみろって言ってたんで。」

「彼はスタンって言うのか」と言いながら振り返ると、

先ほどの米兵とともに、もう一人黒人がいたので驚いた。

あからさまに驚いてる私を見て、嘉手納は

「親父が海兵隊なんですよね。僕はハーフなんですよ」という。

聞くところによると、母親との大恋愛の末、嘉手納が生まれたが、

その後父親は、その次の異動で勤務地がフィリピンになったという。

そう聞いた母親は、そこが沖縄の女性の強さともいえるが、

「あ、コイツは私らから離れたいんだな」と悟り、

女で一つで嘉手納を育て上げたという。

・・・・・

「ボクシングは高校生のとき、バイトで新聞配達しながらやってました」

インターハイは高校の所属選手じゃないと出られない。

国体も新聞配達が出来ず、収入が減ると困るので、出なかったという。

「だから、沖縄の選手としか試合したことなかったんですよ」

そんな彼が就職先に選んだのは、米軍。

母親が米兵と恋愛するくらいだから、英語を学ぶのに適した環境であったのであろう。

また、嘉手納は「勉強は高校で最後だろう」と思っていたので、他の成績もよかった。

だから就職が難しいといわれる米軍にもすんなり入れた模様。

・・・・・

米軍に入ると書くと、イコール軍人とイメージしそうだが、彼の仕事は事務員。

「調理する食材の収集と管理、あとは食堂全体の管理といえばいいですかね」

なるほど、ワタクシと同じサラリーマンというわけか。

「でもボクシングは続けてますよ」というので、「試合は?」と聞く。

「まあまあってとこですかね」と言葉を濁すので、

スタンに「彼は強いのか?」とつたない英語で確認すると、

「強いよ、去年はライト級で米軍の極東大会優勝したんだ。チャンピオンだぞ」

と言われたので、驚いた。

・・・・・

その後、米軍ってのはどうなんだ?もうかるのか?休みの日は何してんだ?

などなど普通の会話をしていたのであるが、やっぱり盛り上がるのはボクシング。

不意に嘉手納が「大学ってやっぱりいいですよね」と言った。

「とは言え、やっぱり稼いでる今の身分のほうがいいんじゃないの?」というと、

「いやあ、やっぱり米軍ってアメリカ社会ですから。

実力主義とか言われますけど、基本的には学歴があった上での話なんです。

軍隊の場合でもそれは一緒です。

出世しようにも元もとの学歴があったりとか、ブランドがないときついですしね。

それに、やっぱり違う世界も見たいってのが大きいです」

なるほどなあと思い、冗談めかして「じゃ、うちの大学受けてみる?」というと、

「そうですね、受けるだけ受けてみますか、難しいんじゃないですか?」

「一応、関西では難しい大学に入るらしいけど、君の場合は英語いけるから

大丈夫だと思うぞ。あとは国語ちょっとやれば点数届くとおもうよ。

俺が通信教育でもしようか?」と答えた。

なんでかと?

そのときの彼の目が真剣そのものだったからである。

・・・・・

次の日、彼の自宅近くの広場で小1時間ほど練習をみた。

もちろんジムにあるようなタイマーもないので、

スタンと交代でストップウォッチを持ち(スタンもボクシングするので)

嘉手納とスタンのミットを持ってみた。

スタンは80kgある上に、元々アメフトをやっていたと言う。

キャリアは1年くらいというのに、ストレートの威力がすさまじかった。

ストレートと言うよりスイングであった。

「これがハンバーガーとコーラLとフライドポテトLのパワーか」と冗談を言うと

「かんとくも、米と納豆と根菜で作った体のクセになかなかミット上手いな」という。

バカにされているのか?と思ったが、まあわかりやすいアメリカ人だ。

次に嘉手納のミットを持つ。

嘉手納は背が175cm程だが、やはり黒人の血を引いているためか

リーチがもっと長いように感じた。

パンチはその長所を活かす為の、まさしくのフリッカーだった。

ただし、漫画で出てくるフリッカーとは違って、肩のスナップでのアッパー気味のジャブ。

「これならアマチュアの審判にもインサイドブローは取られんわな」というと、

「自分の持っている長所は、最大限に利用しないといけませんもんね」という。

でもその後に続く右ストレートが強烈だった。

フリッカーなのでチョッピングライトが来るかと思ったが、

右手が構えているところからそのまま真っ直ぐ伸びてきた。

そしてその衝撃もスタンの丸太で殴る感じには劣ると思うかもしれないが、

相手のアゴを打ち抜けば、間違いなくアマチュアのグローブでもKOできる。

これをリズムを変えて打たれたら、と思うとボクシングが怖くなった。

練習後、コーラを飲む嘉手納が「大学でも通用するか?」と問うので、

スポーツドリンクを飲んでいたワタクシは

「体力をつけて、リズムさえ変えて打つようにしたら、間違いなくチャンピオン」と

言い切ってしまった。

・・・・・

そして男たちは戦いの準備を始めた。

敵は一人ではなく、何万と言う相手だった。

男たちの眼は真剣だった。

そこには自身の世界を広げようと思う若者と、

送られてきた解答を添削してながら、飲んだくれてばかりいる男が、いた。

↑プロジェクト○風味で読んでください。

ということで嘉手納は合格。

米軍の仕事は辞め、4月からKGに来ることになった。

収入はなくなるが、彼が今までためていた分で家族は養えるらしい。

まあ彼は大学に通いながら、昔ながらの新聞配達に精を出すという。

これからの彼の未来に期待してください。

by 上記の文章を読んで恐れをなしている方々への忠告として、

下の日付が何月何日になっているかを確認してみたら?と

ニヤニヤしている、かんとく

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